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以前より話題にあがっておりました、裁判書類の電子提出システムですが、令和4年4月21日より全国に先駆け甲府地方裁判所及び大津地方裁判所で運用が開始されました。
また、その後予定通りであれば令和4年6月にも、知財高裁及び、東京地裁の知財部・商事部、大阪地裁の知財部でも本格的な運用が開始されるとのことです。(ちなみに、「mints」は、「民事裁判書類」、「提出」、「システム」の頭文字からの造語とのとこです。)
さて、この「mints」ですが、準備書面の提出、証拠の提出、上申書等の参考資料の提出をどこでもオンラインでできるとのことで、これまで写しを含めて書面や書証を何部も印刷してきた手間が解消される可能性もありますが、現時点ではいくつか使いづらい点もございます。
例えば、
① 一人の弁護士に一人の補助者(事務局)のアドレスと紐づけられるのですが、補助者(事務局)のアドレスも補助者(事務局)個人と紐づいており、これは別の事件でも適用されるので、事件ごとに担当する弁護士に違う担当の補助者(事務局)を付けることができない。また、一人の補助者(事務局)は一人の弁護士のアドレスとしか紐づけられない。
② 「mints」は現時点ではFAX代替のシステムなので、あくまで送達や印紙代等の手数料納付の必要な書類では利用できない(※令和7年度には、こちらは解消される予定。)
③ 原則として、A4で白黒のPDFデータのみが正式書類として取り扱われる。
④ 記録として上級審に上げられるのはデータではなく、データを裁判所で印刷した紙での記録である。
という点が挙げられます。
①については事務所ごとに不都合性がある事務所とない事務所とになりますが、担当事務がいない事務所や事務局よりも弁護士の方が多い事務所にとっては、運用の仕方を考える必要があります。
②については、不正競争防止法の2条1項1号・2号での周知性・著名性立証のための証拠等、訴状提出の際に提出が必要な書類も原則としてmintsでは提出できないことになりそうかと思われます。もっとも、被告に代理人が付き、かつ、その代理人がmintsの利用を希望している場合には、訴状とは別に追って証拠のみmintsでの提出ができるかという点を、各担当部に確認しても良いと思います。
③については、最高裁曰く、カラーで提出してもカラー印刷ができないからという理由で白黒での提出を原則としているとのことですが、裁判所においてカラー印刷ができる場合には別であるとのことなので、カラーの書面データを提出する際には各裁判所に確認が必須となります。(ビジネスコートが発足するのであれば、是非カラー印刷可能な設備を設けていただきたいです。)
商標や表示の周知性・著名性が問題となる事案でカラー提出が必須の場合には、仮にカラーの書面データの提出を拒否された場合には、mintsでの提出ではなく、これまでと同様、印刷して提出しなければならないことも多いかもしれません。
④については、裁判所の印刷の「鮮明さ」が問題となるかと思います。商標や不正競争防止法等、証拠に写されている標章または表示の類否が判断される場合には、どの程度鮮明に印刷がされるかで、裁判官の印象も大きく違ってくるかと思います。そうすると、証拠の細かな部分をフォーカスしたい場合には、電子データでの提出ではなく、書面による提出を選択するというのも戦略としてはあり得るものと考えます。
未だ全国的に本格的な運用が開始されていない「mints」ですが、上記の問題で点も時期解消されるかもしれません。もっとも、弊所としては、この制度が存在することを前提としつつ、「mints」を利用することのメリット・デメリットを考え、クライアントの皆様に最も相応しい戦略を選択していきます。
なお、「mints」についての新たな情報が入りましたら、随時アップしていく予定ですので、注目お願い致します。
弁護士 藤沼 光太