弁護士ノート

lawyer notes

インタビュー記事(小林弁護士)

2022.01.24 弁護士:小林 幸夫

小林幸夫弁護士が10年ほど前に弁護士列伝からインタビューを受けた際の内容です。
※かぎ括弧内は現在の小林弁護士からのコメントです。

 

Q1.弁護士になろうとしたきっかけを教えてください。

A1.中学から高校にかけて既に弁護士を目指していました。今から振り返ると、父がサラリーマンをやっていたことから、自分の力で切り開ける仕事がしたいと思ったのだと思います。

 

Q2.弁護士になって特に印象に残っている事案(事件)を教えてください。

A2.これは沢山あります。箇条書的に言いますと、
・ 偽たまごっち事件を担当し、多くの偽物退治や勝訴判決を得たこと。
・ 大手銀行の依頼で、1千億円程度の不良債権の担保物件を片付けたこと。
・ 競売事件の保全処分として大きなホテル跡地内に入ったこと。
・ 意匠仮処分事件で勝訴できると思ったところ、一審で却下決定として負けた後、高裁で逆転して勝った事件。
・ 近所の人が夜に自宅に来て離婚した夫が養育費を払ってくれないのでなんとか相談に乗ってほしいと言われてかかわり無事解決した件。
・傷害事件の民事訴訟で、被害者側の代理人としてかかわり、数人の加害者との和解が成立した。内容は200回以上の分割金支払いであり、到底完済できないと思っていたが、いろんな工夫を施し13年かかってほぼ全員から和解金の完済を受けたこと。
などが嬉しかった事件です。
 しかし、逆に困難な事件もたくさんありました。
・ 特許権ライセンスイニシャル料不当利得返還請求事件で、交渉段階から担当し、訴訟になっても負けないと思っていたところ、訴訟となり、証人尋問を経て敗訴となったこと。
・ 一審にて完全勝訴判決をもらったのに、知財高裁にて逆転判決をもらって愕然としたこと(最後の最後までわからないということです)などいろいろあります。他の弁護士も同じだと思いますが、泣きなくなるような事件・判決は毎年ありますよ。
【現在の小林弁護士のコメント:このインタビュー後10年以上経過しましたが、今だに泣きたくなるような事件は続いています。】

 

Q3.弁護士のお仕事の中で嬉しかったことは何ですか。

A3.依頼者から、感謝の言葉を貰ったこと、思い通りの判決や、思い通りに和解が成立した時などです。また、自分が関与した映画が封切りとなりタイトルバックに自分の名前が載ったりすると嬉しいです。
【現在の小林弁護士のコメント:今も映画に関する相談はあり、これから公開される映画、例えば「TANGタング」に法律監修として名前がでてきます。】

 

Q4.弁護士になって一番大変だと感じることは何ですか。

A4.依頼者とのヒアリングや訴訟の段取りが大変です。依頼者とのミーティングの段取り、事務所の経営の段取り。仕事の8割が雑務・雑用という気が致します。

 

Q5.休日はどのようにお過ごしですか。

A5.ほとんど仕事ですが、本を読んだり、散歩をしたりします。映画も大好き、ゴルフもちょっとやります。スキューバの免許も去年とったりしてます。
【現在の小林弁護士のコメント:スキューバはもうやっていませんがテニスを再開しています。ネイティブ先生の英語レッスンも毎週受けています。】

 

Q6.弁護士としてお仕事をする上での信条・ポリシーを教えてください。

A6.依頼者の為にベストを尽くすという事。依頼者の目線にたつということです。

 

Q7.ご依頼者様に対して、特に気をつけていることは何ですか。

A7.何と言っても、ミーティングによる事情聴取です。
メールではなく、必ず会った上で話を聞く、現場で話を聞く、ということに気をつけています。1回のミーティングは、100通のメールに勝るということです。あまりにメールしすぎです。電話とか会いに行くということはできないのでしょうか。

 

Q8.先生の講演記録「私の文具力・図解力」を拝見し、大変面白く思ったのですが、このような工夫はいつからされていたのですか。

A8.10年以上前からやっています。
 依頼者とのミーティングには、ホワイトボードや大きな白いノートに図を書きながら、ヒアリングをします。そして、ホワイトボードの場合は、それを写真に取ってカラープリントして依頼者に渡し、大判ノートの場合はカラーコピーして渡すということをしています。依頼された方は、今日は何の話をしていたのか、次に何を準備すればよいか、弁護士は何を準備して何をしてくれているのか、ということをきちんと理解ができます。当たり前のことですが、時間も早く済むし、納得度も違います。
仕事に関する書類も全て図式化して、保存しています。専用のソフトで作っているのですが、このようにして作った図は1000以上あると思います。一度公表して書籍にする話がありましたが、まとめるのに時間がかかり、断念しました。
【現在の小林弁護士のコメント:ホワイトボード方式はもうやっていませんが、ウェブミーティングでも、ミーティング議事録(決まったこと、依頼者に検討してもらうこと、次回のスケジュールなどを記載)をパワーポイント図解にして記録しています。】

 

Q9.弁護士として特に関心のある分野は何ですか。

A9.専門は、知的財産権ですが、何にでも興味があります。

 

Q10.今後の弁護士業界の動向はどうなるとお考えでしょうか。

A10.競争は厳しくなるでしょう。しかし、しっかりコミュニケーションがとれる弁護士は少ないと思います。
 今の弁護士はメールで済ませてしまうことが多すぎます。Q7でも申し上げたように、メールはコミュニケーションの道具として、ミーティング、電話にはるかに劣るのに、それで仕事を済ませようという姿勢はいけません。
【現在の小林弁護士のコメント:審決取消訴訟を含めて知財訴訟の数は10年前の半分程度になったのではないでしょうか。それだけに競争は年々厳しくなっていると思います。】

 

Q11.先生の今後のビジョンを教えてください。

A11.特にありません。本当はしっかりしたビジョンを描くべきでしょうが、その場しのぎできたのです。大いに反省すべきことです。
【現在の小林弁護士のコメント:10年以上たった今も、その日暮らし、その場しのぎの体勢は変わっておりません。】

 

Q12.このページを見ている方々に対してメッセージをお願い致します。

A12.法曹を目指す人に対しては、法律事務所でアルバイトでもサマークラークでもエクスターンシップでもいいので、一度何らかの法律実務や仕事に触れてみることを勧めます。 机の上や教室での勉強では、意味がないです。
【現在の小林弁護士のコメント:最近はロースクールに行かず、予備試験⇒司法試験合格者の方が増加しています。できれば実務の体験をどこかですることは重要だと思います。】

 

Q13.ページを見ている法曹界を目指している方に向けてメッセージをお願いします。

A13.色々な事に関心を持つこと、色々な経験、できれば苦労をすることです。また、挫折したり、失敗したり、人に怒られたりすることも重要です。
今の若い人には順風満帆というか、レールに乗っかった生活に慣れすぎています。ひもじい体験もなく、チャレンジをしない、リスクを冒すことがない。今後、法曹になって苦労している依頼者を接したときの対応とか思いやりが違ってくると思います。
 私など、小さいときは、親は会社員でしたが、長屋(共同トイレ・水道ではなく共同井戸)のようなところで暮らしていました。まわりもそんな生活でした。みんな必死で勉強し、仕事をし、生活していたのではないでしょうか。親世代は、大学はおろか高校も行っていない人がほとんどでしたし。親のすねで高校・大学を出て、ロースクールに入り、親のお金で卒業する、合格したら、研修所の下でいろんな法曹の人の基で勉強させてもらい、事務所に入ってからは弁護士の庇護の下で仕事をして給料をもらう、という生活が永遠に続くことはないです。いつか自立して、自分の道を切り開く時期がくるのです。そのとき、独力でできる力を常日頃から培っておくべきでしょう。
【現在の小林弁護士のコメント:10年以上前の原稿ですが、メッセージとしては同じです。簡単な仕事はひとつもなく、苦しい仕事、困難な仕事、敗訴事件であっても、後日大いに学ぶことがあります。】

 

<取材学生からのコメント>
 小林幸夫先生にお話を伺いました。インタビューでもご紹介しましたが、小林先生はお仕事のやり方にたくさんの工夫をこらされていています。そのようなことからも、ご自身で全て切り開いてこられた小林先生の力強さを感じることができました。一方で、先生が落ちこんだ体験や失敗した経験なども包み隠さずお話頂き、お仕事に対するとても真摯な思いが伝わってきました。また、Q13では、何不自由なく生きてきた自分にとっても耳の痛い、しかし非常に重要なアドバイスを頂きました。多くの受験生の方々にとっても、とても参考になるメッセージになったのではないでしょうか。今回はお忙しい中、インタビューをさせて頂き、本当にありがとうございました。
【現在の小林弁護士のコメント:インタビューしてくれた大学4年生の方は、当方に触発されたかどうかわかりませんが、その後ロースクールに入学し、司法試験に合格されました。合格したというお知らせを聞いたときは当方もとても嬉しかったです。】

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