弁護士ノート

lawyer notes

裁判所におけるウェブ会議

2021.07.15 弁護士:神田 秀斗 その他の知的財産関連業務

新型コロナウィルス流行の影響で在宅勤務やウェブ会議の利用が加速していることは周知の事実かと思います。
上記のウェブ会議の流れは裁判所にも妥当します。クライアントの方から,「裁判もウェブ会議でやるんですか!?」というご質問を頂戴することも多いため,本稿では,民事裁判のウェブ会議化の実態について書いてみようと思います。

1 形式は?
 民事裁判においては,①口頭弁論期日,②弁論準備手続期日,③書面による準備手続期日,④進行協議期日等の期日が準備されています。コロナ禍より前は,①又は②の期日が用いられていました。①は公開の法廷で行われる期日であり,②は非公開で,いわゆるラウンドテーブルと言われるややインフォーマルな場所で行われる期日です。いずれにせよ,当事者が裁判所に出頭して行われる期日です。
 民事訴訟法には,コンピュータを用いたウェブ会議を可能とする(直接的な)条項は,現時点ではありません。そこで,現在では,上記③又は④の期日が採用されています。③について,民事訴訟法では「音声の送受信により同時に通話をすることができる方法」と定められており,以前では電話会議システムが想定されていましたが,これをウェブ会議に応用したかたちになります。もっとも,これはあくまで整理手続に過ぎないため,正式な書面及び証拠提出については,後日開催される口頭弁論期日(①)にて行われることとなります。
 ④については,単に裁判の進行を協議するだけの期日ですが,その方法に制限がないため(裁判所外でも可能であり,裁判官の現地調査の時などに用いられています。),ウェブ会議にも利用されています。

2 どの程度開催されている?
 ウェブ会議の開催の程度ですが,裁判所が当事者ないし代理人の出頭に積極的でない限り,ほぼウェブ会議により開催されています。
 ただし,裁判所がウェブ会議に積極的でも,当事者や代理人が,技術的にウェブ会議を利用できない場合は,現実に出頭する形での期日開催が行われています。

3 方法は?
 裁判所は,Microsoft Teamsを利用しており,その他のアプリ(Zoom,Skypeなど)は許可されておりません。
 また,アクセス場所や使用するパソコンの種類等も事前に届け出ることが要請されており,代理人が就いている場合には,原則として1つの法律事務所からのアクセスが推奨されています。

4 結論としてどちらがいいのか?
 裁判所へ赴く手間が省けたというのはウェブ会議の大きな利点です。クライアントの方へも交通費のご負担を掛けなくて済みますので,経済的にはメリットが大きいと思われます。
他方,デメリットとして,ウェブ会議では面前での会話ができないため,和解による話合いの場などではコミュニケーションがとりづらいところがあります。また,音声や映像が途切れたり,複数の当事者が繋ぐ場合には誰が話しているか(誰に話しかけているか)分かりにくい等,技術上の問題もあります。
 さらにいえば,我々としては,期日後に,代理人同士で事件の進行について協議することもあるのですが,ウェブ会議の場合,接続が切れたらそれで終了なため,そのような話し合いもできなくなってしまいます。
 結局は,どの場面で用いるのが最適かという問題かと思われます。例えば,「出頭確認→書面・証拠提出→次回期日の設定」しか行われないような形式的な期日においては間違いなくウェブ会議が適しているでしょうし,弊所がよく行う技術説明会やギリギリの和解交渉等は面前で行うほうがよいと思われます。
 いずれにせよ,ウェブ会議にメリットがあることは間違いないので,コロナ終息後もウェブ会議がなくなることはないと思われます。

以上
(神田秀斗)

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