著者
以前,本コラムでご紹介した東京都大田区での研修に引き続き,本年2月には,今度は東京都西東京市において,私が所属する第二東京弁護士会の民事介入暴力被害者対策委員会による研修が行われました。
このように自治体での研修が続いている事実は,自治体側の危機意識の強さを示しています。かつては,行政対象暴力といえば,反社会的勢力による暴力的不当要求を指していましたが,現在は,一般市民による不当要求行為がその中心になっています。一般市民が,執拗に自分勝手な主張を繰り返し,理不尽な要求を認めさせようとして延々と電話をかけ続けたり,窓口に居座り続けたりするケースが増えているのです。
その背景には,顧客主義的行政サービスの浸透があると言われています。顧客主義といえば民間企業が思い浮かびますが,現在は,自治体などの行政機関でも顧客主義が浸透してきています。その行政機関の顧客主義を逆手にとり,「どうだ自分はお客様なのだ」という意識で一般市民が不当要求行為を繰り返すのです。
この一般市民の不当要求行為により,現場の事務は支障を来たし,対応する担当職員は精神的に追い込まれていきます。
一般市民の不当要求行為に対しても,自治体は組織的に対応すべきです。対応マニュアルを作成し,定期的に研修会を開くなどして,情報を共有し,また,対応の練習やより適切な対応の仕方などを学んでいくことが必要です。
第二東京弁護士会の民事介入暴力被害者対策委員会では,自治体に対して,不当要求行為に関する研修を積極的に行っています。まだ不当要求行為対応マニュアルすら作成していな自治体も少なくないと聞いています。第二東京弁護士会までご連絡いただければ,民事介入暴力被害者対策委員会として,マニュアル作成,講演,寸劇,ロールプレイング(応対練習)など様々なお手伝いをさせていただきます。
(弓削田 博)