著者
2020年4月に民事裁判IT化の第1歩となるweb会議システムの運用が始まってから、早7か月、裁判所が積極的にweb会議システムによる期日開催を要請してくることもあり、web会議システムによる期日を経験した法律事務所も多いかと思います。
これまでの日本の裁判は、世界から見てもとても遅れていました。未だFAXが現役で、しかも積極的に使用されている業界なんてとても少ないですよね。実際、世界銀行の2019年ビジネス環境ランキングにおける司法の利便性についてのランキングによると,1998年に裁判のIT化を導入したシンガポールが1位,2010年に導入をした韓国が2位となっており,日本は何と52位という不名誉なランキングが付けられてしまいました。
では、司法のIT化、特に民事裁判のIT化とはどのようなものなのでしょうか。2017年10月に内閣官房に設置された裁判手続等のIT化検討会の報告書では、「3つのe」を達成することを目標とすることが掲げられました。
具体的には、
・主張・証拠のオンライン提出などの「e提出」、
・主張・証拠のオンラインでのアクセスなどの「e事件管理」、
・web会議システムの導入や、期日におけるITツールの活用などの「e法廷」
の実現が目標とされています。
そして、上記検討会の報告書によると、「3つのe」を実現するためのスケジュールは以下のとおり、3フェーズに分かれており、このフェーズ1の「e法廷」の実現の一つとして、web会議システムが導入されました。
【出典:裁判手続等のIT化に向けたとりまとめー「3つのe」の実現に向けてー】
とはいえ、まだまだフェーズ1の最初の段階です。フェーズ3のe提出まで実現されれば、主張書面や証拠をデータで提出できることになります。ここまでくれば、これまで正本副本に加えて写しを含め5部も6部も同じ書面を印刷して、提出作業をする事務の時間を節約できるようになるかもしれません。
ただ、法制審のIT化部会では、裁判所から、「裁判所ではそんなに大量に印刷ができない場合があるから、記録保存用に印刷をお願いする場合があります」との発言もあるようで…オンライン提出(e提出)をする際、アカウントを付与して事件管理をするなど、IT化に向けていろいろと議論がされておりますので、今後の動向に注目です。
弁護士 藤沼光太