著者
1 特許訴訟と辞典合戦
以前のブログで国語辞典に言及したことがありましたが、今回のブログでは、特許訴訟に必須の科学用語辞典を題材にしてみたいと思います。
特許権侵害訴訟においては、特許法104条の2(被告は原告が侵害行為であると主張する行為の具体的態様を明らかにしなければならないとするもの。)の存在もあって、事実関係に争いがあるというより、構成要件中の文言の意味解釈に争いがある場合が多いです。こういう場合、明細書の記載などから当該文言の意味を特定できる理屈を組み立てるだけでなく、自らに有利な記載のある辞書、辞典を引用しあうことがよくあります。
2 JIS工業用語大辞典の購入
『新・注解特許法上巻』は、「明細書が当該技術分野の通常の学術的知識を持つ当業者を名宛人としているからには国語辞典における定義に拘泥することなく学術用語としての普通の意味を探求する解釈が正しいあり方である。その際、マグローヒル科学技術用語辞典あるいはJIS工業用語大辞典等の科学辞典類が参照されることが多い。」としています。
『新・注解特許法』で例示されるほど知財業界で有名な辞典ですから、私も、入所してしばらくして大きな特許権侵害訴訟の第一起案を任されたときに、ちょうどJIS工業用語大辞典に出ていそうな用語の解釈が問題になっていたため、JIS工業用語大辞典を購入しました(ちなみに、マグローヒル科学技術用語辞典は小林弁護士のものを拝借しています。)。
3 高かったかな…
1年目から大きな特許訴訟を担当させてもらい、絶対に勝ちたいと意気込んでいた(今でもそうですが)から躊躇はありませんでしたが、駆け出し弁護士にとって、税別5万2000円は結構大きいですよね(^_^;)
もちろん、実際に特許訴訟で役に立っているので、後悔はありません。それからも、科学用語辞典の買い増しは続いています。
(河部)