弁護士ノート

lawyer notes

不動産は所有権放棄できない?

2016.02.12 弁護士:河部 康弘 一般企業法務

1 相続のご相談案件

だいぶ前になりますが、相続のご相談をいただき、その中で「不動産を所有権放棄できるか。」という問題が浮上しました。

動産の所有権放棄については、所有権放棄書を作成する場面にも出くわしていますし、可能であると即断できました(ご相談後に念のため調べたところ、注釈民法にも記載があり、判例も存在しました。)。

しかし、相続人が見つからず行き着くところまで行くと国庫に帰属する(民法959条)というのは知識として知っているけれど、自発的に不動産の放棄ができるのかは考えたことがないし、できるとしてもどうやって登記するのか…

即答はできないと判断し、「あまり聞いたことがないので、できるかどうかも含めて調査をさせてほしい。」とお願いしました。

2 不動産の所有権放棄について調査をしてみると…

民法についての最も詳しい解説書である注釈民法(民法239条の部分)をあたると、不動産を所有権放棄できるのかはっきりしないとされています。

…結局インターネットで不動産は放棄できない(放棄手続がない)とする弁護士の岡本政明先生のコラムに行きつきました。

3 本当に所有権放棄できないのか?

しかし、条文上不動産が放棄できないと正面から書かれているわけではありません。昭和41年8月 27日付民事甲第1953号民事局長回答はありますが、これはあくまで行政の見解であり、司法の判断ではありません。本当は不動産の所有権放棄は可能なのに、立法の手抜かりで手続が制定されていないと考える余地はあるようにも思えます。

仮にその違法性を争って訴訟する場合、放棄不動産の国への移転登記手続請求ということになるのか…今までに試みられたことがあるのか分からないですが、いつかはそんな判例が現れるのでしょうか。                     (河部)

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