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1 まずは「WHO IS」で検索
こんにちは、河部です。
今回はJPドメイン名の調査からJPドメイン紛争処理手続に至るまでの流れについて、順を追って説明していきたいと思います。3回も同じテーマで引っ張りすぎかもしれませんが、これが最後なので許してください(^_^;)
取得しようと思っていたJPドメイン名を第三者が既に購入していたことに気付くのは、おそらく自分がJPドメイン名を購入しようとした際に、自らのロゴ等が入ったJPドメイン名を購入できないことが判明したときでしょう。この場合、まずは株式会社日本レジストリサービス(以下「JPRS」といいます。)の運営する「WHO IS」で、当該ドメイン名を検索すると、誰がドメイン名の所有者かが分かります。
2 「WHO IS」でも分からなかったら…方法は2つ
「WHO IS」で検索すれば、登録者名や連絡先が分かることが多いです。しかし、中には登録者名が「○○○」などと伏せ字にされている場合も存在します。私の経験でも、「WHO IS」では伏せ字にされていて「WHO IS」だけでは対応できない事例がありました。
こういった場合にどうやって登録者名や登録者の連絡先(連絡先が分からないと譲渡交渉ができませんので。)を入手するか?方法としては、①JPドメイン名登録情報の公開・開示制度を用いる方法、②弁護士照会(弁護士法23条の2)による方法の2つがあります。
①による場合、JPRSは決められた範囲までしか情報を教えてくれません。しかし、②の弁護士照会であれば、JPRSに登録されている情報を漏れなく開示してくれます(実際にJPRSに問い合わせたので、確かなはずです。)。
3 弁護士照会がお勧め
①であれば、弁護士に頼まなくても自分で行うことができます。しかし、私としては②の弁護士照会がお勧めです。なぜなら、JPドメイン名の譲渡交渉においてはファーストコンタクトが重要であり(重要である理由は後ほどご説明します。)、できるだけ情報を入手した上で連絡を取る方法を考えた方が得策だからです。
4 JPドメイン名の譲渡交渉は入り方が重要
⑴ 不正の意図がない相手の場合
登録者の意思に反してJPドメイン名の移転を受けるためには、JPドメイン名紛争処理手続で移転裁定を勝ち取らなければならず、移転裁定を勝ち取るためには、登録者の不正の目的を立証することが要求されます(JPドメイン名紛争処理方針4条a.(ⅲ))。
金銭を要求するでもなく、ドメイン名を商業利用するでもない場合(例えばそのブランドのファンの方が、好きが高じてドメイン名を取得したような場合が想定できます。)には、任意に譲渡に応じてもらえる可能性がありますが、これができなければ、いかにJPドメイン名紛争処理手続において申立人側に有利な結論が出やすいといえども、ドメイン名を取得できるか怪しい部分が出てきます。したがって、下手に高圧的な態度に出てファーストコンタクトで心を閉ざされないように、配慮が必要です。
⑵ 不正の意図がある相手の場合
逆に、金銭を目的とした相手であれば、どう登録者の悪意を立証する証拠(≒登録費用を超える金銭を要求する証拠)を引き出すか、これが最大の課題です(フリーライドを目的としている場合は、交渉で引き出さずともインターネットで調べられるため、場合によってはいきなり裁定でも構いません。)。
既にお伝えしたとおり、裁定では申立人よりの裁定が下ることが多いですが、絶対とは言い切れません。下手をすると、最低手数料20万円+弁護士・弁理士費用をドブに捨てることになります。できれば確実な証拠を掴めるように、ファーストコンタクトのときから意識しておく必要があります。
いずれにせよ、JPドメイン名の譲渡交渉においては、最初の入り方が重要です。
5 費用はかかってしまいますが…
JPドメイン名紛争処理手続を行うためには、知財仲裁センターの手数料だけでも20万円近くかかります。また、代理人として弁護士や弁理士が手続を行う場合、どうしても相応の費用がかかってしまいます。
もちろん、自社ブランドの顧客吸引力にフリーライドするような悪質な輩に対しては断固たる姿勢で臨むべきです。その姿勢は、裁定の結果という形で、外部に公表されることになり、抑止力として働きます。
(河部)