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令和5年5月12日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス新法」といい、条文番号のみ記載する場合はフリーランス新法の条文を指します。)が公布され、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行されることとなりました。
概要は後述しますが、すごく簡単に言うと、フリーランス[1]と事業者との取引を適正に行う目的で(第1条)、フリーランスに業務を委託する事業者に対し、禁止行為や義務を課すものです。
フリーランスに該当する人は、昔から芸能人、漫画家、作家等様々な業種にいましたが、現在では、システムエンジニア、Youtuber等、より多くの業種へフリーランスの働き方が広まっています。
フリーランス新法が施行されるとこれらの人の多くが同法の適用を受けることになり、フリーランスの人はもちろん、フリーランスに業務を委託する事業者にとっても無視することのできない重要な法律となります。
1 概要
(1)適用対象
「特定受託事業者」(第2条第1項)に対して「業務委託」(第2条第3項)をする「業務委託事業者」(第2条第5項)又は「特定業務委託事業者」(第2条第6項)に適用されることになります。かなり適用範囲の広い規定となっているため、会社が従業員を使用しない個人に対し業務を委託する場合は、フリーランス新法がほぼ適用されるものと考えられます。
(2)委託事業者の義務・禁止事項
下記の義務及び禁止事項が規定されていて、下請法上の親事業者の義務及び禁止事項と重複する内容も多く、比較的理解しやすい規定となっています。
ポイントとして、下請法のように、規定されている義務及び禁止事項が親事業者に全て適用されるわけではなく、下記図のように、「業務委託事業者」、「特定業務委託事業者」、「特定業務委託事業者」が継続的業務委託をする場合とで、それぞれ適用範囲が異なります。
特に、委託事業者に従業員がいるか否か(特定受託事業者該当性)、委託業務の内容が継続的業務か否かによって、委託事業者が負う義務や禁止事項が大きく変わるため注意が必要です。
2 今後の対応について
フリーランス新法の規定には下請法と同じものが多いため、下請法上の親事業者としてこれまで下請法への対応をしてきた事業者は、法の適用場面と「解約等の予告」(第16条)にさえ注意すれば基本的に問題なさそうです。
しかし、これまで親事業者に該当せず下請法の適用がなかった中小企業等は今後、契約時、履行時、契約終了時の各段階で対応が必要となります。
今後さらに規則の制定等により詳細が詰められることになっているため、随時新たな情報を確認していきたいと思います。
参考:https://www.jftc.go.jp/fllaw_limited.html
公正取引委員会のフリーランス新法に関するウェブサイト(説明資料やQ&A等を確認することができます。)
平塚 健士朗
[1]『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』(令和3年3月26日、内閣官房他)では、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義付けされています。