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今回は、刑裁修習について紹介します。
1.刑裁修習
(1)概要
刑裁修習は、基本的な内容は民裁修習と同じく、記録検討、裁判傍聴、起案が中心です。民裁修習と異なるのは、修習生がそれぞれ裁判官、弁護士、検察官役となって行う模擬裁判があることです。
私の修習地では、裁判傍聴やその記録の検討、模擬裁判の準備を日常的に行いつつ、随時起案を複数回行い、途中で裁判官のロールプレイがあって、後半に模擬裁判があるという進行でした。
(2)記録検討
ア 刑事の記録は読みやすい
刑事事件の記録は、個人的にはかなり理解しやすいです。
起訴状を見れば事件の概要をある程度把握することができ、また、証拠の順番もある程度決まっているため、記録に綴じられる順番さえわかれば、比較的読みやすいです。
イ 記録を見ているとその土地の治安がわかる
記録検討や裁判傍聴をしていると、その修習地で普段どのような事件が起きているのかがよくわかります。他の修習生に話を聞いた個人的な印象ですが、修習地によって起こる事件の種類は多少異なるようです。
ちなみに、私の修習地は、裁判員裁判が年に数件程度しかないという平和な地域でした。事件数も都市部に比べれば少ない方だったようです。
(3)裁判傍聴
民裁修習と同じく、記録を読んで裁判を傍聴し、その後裁判官と手続や内容に関して協議することになります。
一方で、法廷内に重苦しい空気が流れている点や、傍聴人が多い点は、民事裁判と異なる点だと思います。
刑事裁判では、被告人が警察官に連れてこられますが、これだけでもかなり緊張感があります。実際、裁判中に暴れる被告人もいるため、裁判所も対応にはかなり気を使っている印象でした(私の修習中にもありましたが、事前に傍聴は止められていました。)。
また、記者や被告人の関係者等が傍聴に来ることが多く、席がほとんど埋まる場合も少なくありません。
(4)起案
私の修習地では、実際に修習地で起きた事件や係属中の事件を題材にして起案をし、それを裁判官に講評してもらうという流れでした。
なかなか大変でしたが、起案についてしっかり講評を受ける機会は集合修習以外にはほとんどないため、とても貴重な機会です。集合修習前の段階で起案についてかなり丁寧に教えてもらえたおかげで、その後の集合修習の起案や二回試験がかなり楽になったと感じます。
(5)模擬裁判
研修所から配られる記録をもとに模擬裁判を行います。私の修習地では、証人の取調べや被告人の接見等、事実関係を確認するところから、ほぼ丸1日使って行う公判まで一通り行いました。
私は、検察官役を担当しましたが、事案的に検察有利な事案だったこともあり、主張は組み立てやすかったと記憶しています。
なお、研修所が作る事件記録は、登場人物の名前に元ネタがあります。ちなみに、私がこのとき検討した事件の元ネタはトトロでした。トトロの登場人物だけでなく、声優の名前をもじったような名前も使われていて、私は気づきませんでしたが…
2.さいごに
他のクールでもそうでしたが、刑裁修習の裁判官の方々にもとても丁寧に指導していただきました。ただでさえ忙しい中、起案の講評や模擬裁判等、配属部の裁判官総出で指導していただき、修習生だった当時も思っていましたが、今考えても大変ありがたいことだったと感じます。刑事部の皆様、その節は本当にありがとうございました。
次回は、修習生がそれぞれ修習内容を選んで行われる、選択修習について紹介します。
平塚 健士朗