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1 家裁修習
(1)家裁修習は1週間だけ
修習生は、民裁修習期間中、ずっと民事部で修習を行うわけではありません。1週間ほど家裁に移動して、家裁修習を受けることになります。ここでは、たった1週間程度しかないため、起案等はなくひたすら調停を傍聴することになります。
(2)内容の濃い調停傍聴
民事裁判の期日が数分で終わることも少なくない中、家裁修習は、一回一回の期日が長いです。そして、一回の期日内で、当事者間の話し合いがじっくりと行われるため、非常に見応えがあります。
また、家裁調停で傍聴する事件は、一般的に法曹の仕事としてイメージされることの多い離婚や相続なので、調停で話し合われている内容も理解しやすく、限られた時間の中で傍聴前後に行う事案の検討が、かなり深いところまで可能です。
(3)当事者も人間、調停委員も人間
一般的に、通常の民事裁判では、期日中に当事者が話す機会というのはそれほど多 くありません。ほとんどないといってもいいくらいです。それに対し、例えば離婚調停では、当事者が調停委員に対して直接話す機会はとても多いです。
当事者自身の口から語られる生々しい事実や思いからは、当事者にはそれぞれの言い分があり、こういった紛争が、どちらが正しくてどちらが間違っているかという二者択一では測れないことに気付かされます。
また、人間味を感じるのは当事者だけではありません。調停委員も同じです。(なお、裁判官には人間味を感じないということではないです。念のため。)
これは、法的にどちらがより正しいかというよりも、あくまで当事者が双方納得する点はどこか探る作業を行う調停においては、期日の進め方や判断について、調停委員個人の考え方が大きく影響すると感じたからかもしれません。そういう意味で、弁護士としては、通常の訴訟以上に代理人としての活動が難しいといえるのかもしれません。
(4)選択修習中の家裁修習選択のすすめ
家裁修習は、(配属庁によりますが)実は自分で選べば選択修習中にも修習することができます。
私は、家裁裁判官の強い強いすすめもあって、選択修習中にも家裁修習をしました。実際に選択した感想として、選択修習中に家裁修習をするのはよい選択だと思います。
というのも、家裁修習の必要なカリキュラムとしては民裁修習中に終わっているはずなので、かなり自由に家庭裁判所の業務全体をみることができるからです。
例えば、児童福祉施設の見学、家裁調査官が普段どのような業務をしているのか、また、家裁調査官が子供の性格や環境を調査するために行っている簡単な心理テスト等を体験することもできます(民裁修習中にも希望すれば体験させてくれるかもしれません)。
個人的な印象として、選択修習では、民裁修習の時と比べて、家庭裁判所の業務の中でも、子供関係の業務をより多くみることができたように思います。
このような経験は、今後弁護士になって家事事件を担当する際、非常に役に立ちます。
(5)ちなみに
家裁修習に限らず、実務修習中は、日誌を書くように言われます。
頻度や分量は配属庁によって異なるようですが、私の配属庁では、1週間ごとにA4用紙1枚分程度書く形でした。
また、日誌に書く内容は比較的自由ですが、配属部の裁判官だけでなく所長等、いろんな方に意外と読まれています。
私は、その週に修習した内容と、その週に起きた個人的な出来事等を思いつくままにつらつらと書いていました。
そして、配属部の裁判官は、日誌からも修習生がどんな人なのかを感じ取っていたように思います。
その意味でも、修習生は、日誌にいろいろなことを書くとよいかもしれません。(配属庁によって日誌の取り扱いも異なるので、私のように自由に書いて万が一やり直しになっても責任は負いません。)
2 最後に
家裁修習は期間が短いので、後悔しないよう、集中して取り組むとよいと思います。裁判官は、業務に対する考え方はもちろん、裁判官が参考にしている本までいろいろなことを教えてくれると思います。
次回は、検察修習(私は第2クールにありました。)について紹介したいと思います。
平塚