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1 民法改正の影響は多方面に及ぶ
こんにちは、河部です。今月初めに改正民法の条文案が発表されましたが、その余波はあらゆる法律分野に及んでおり、改正民法の条文案と一緒に民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案が発表されています。
2 特許法への影響
弊所が専門とする知的財産法分野でも、若干の改正が予定されています。弊所の民法改正担当(?)として、今回は、特許法への影響(新旧対照条文の299頁〜300頁)について確認していきます。
3 特許法65条1項6号の改正
特許法65条1項6号の改正は、民法724条の規定が改正されたのに伴い、「同条中」を「同条第一号中」に修正するというものです。
民法724条は、以下のとおり修正されています。
【改正前民法724条】
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
【改正後民法724条】
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724条
不法行為による損害賠償請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
二 不法行為の時から20年間行使しないとき。
「同条中」が「同条第一号中」に変わっても、65条1項6号の意味内容は全く変わりません。
しかし、民法の規定が「期間の制限」から「消滅時効」に変わった点は、若干の影響を及ぼします。この点については、改正民法724条に影響を受けて改正がなされている不正競争防止法について言及する際に、改めてご説明したいと思います。
4 特許法88条の改正
特許法88条は、以下のとおり修正されています。
【改正前特許法88条】
(対価の供託)
第88条
第86条第2項第2号の対価を支払うべき者は、次に掲げる場合は、その対価を供託しなければならない。
一 対価の弁済の提供をした場合において、その対価を受けるべき者がその受領を拒んだとき、又はこれを受領することができないとき。
二 その対価について第183条第1項の訴の提起があったとき。
三 (略)
【改正後特許法88条】
(対価の供託)
第88条
第86条第2項第2号の対価を支払うべき者は、次に掲げる場合は、その対価を供託しなければならない。
一 対価の弁済の提供をした場合において、その対価を受けるべき者がその受領を拒んだとき。
二 その対価を受けるべき者がこれを受領することができないとき。
三 その対価について第183条第1項の訴えの提起があったとき。
四 (略)
これは、改正民法494条(供託)の形式に対応して修正されたものですが、1号に詰め込んでいたものを分けた、「訴」に送り仮名をつけたという程度で、内容は全く変わっていません。裁定制度自体あまり利用されていませんし、実務に全く影響ないと断言してよさそうです。
5 特許法改正自体は実質的な影響なし
このように、民法自体の改正はともかく、民法改正に伴う特許法改正について、あまり気に病む必要はなさそうです。次回は、商標法の改正を見ていきたいと思います。
(河部)