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コロナ禍以降世間一般でウェブ会議が利用される機会が多くなりましたが、民事訴訟手続に関しても2020年2月から争点整理手続においてウェブ会議が積極的に活用されるようになりました。弊所が多く担当する知財訴訟については、2020年2月当初からそのほとんどの期日がウェブ会議となっておりました。2023年3月には弁論準備手続もウェブ会議によって開催することが可能となり、準備書面の陳述、証拠調べ等の実質的な審理が可能となりました。
そして、今月(2024年3月)からは口頭弁論についてもウェブ会議を利用して参加できるようになります(ただし、尋問はウェブ会議を利用することができません。)。従前は口頭弁論だけは裁判所に出頭する必要がありましたが、今月からは実際に裁判所に出頭することなく裁判期日に参加することが可能になります。これにより、裁判所の場所による審理手続の相違はほとんどなくなるといえます。
私は約4年間ウェブ会議による裁判期日を経験してきましたが、①出廷のための時間や労力の削減、②日程調整の容易化、③コスト削減というメリットを実感しているところです。特に遠方の裁判所の事件を受任する場合にはこのメリットが大きいです。
また、裁判所ではウェブ会議のためにMicrosoftのTeamsが導入され、裁判官がTeamsを日常的に見ますので、裁判官との連絡が取りやすくなったというメリットもあります(Teamsが導入される前は電話かFAXでしか裁判官との連絡ができませんでした。)。
さらに、裁判期日の際には、裁判官がTeamsのチャット機能を用いて、審理概要、次回期日までの当事者の準備事項等を記載してくれる場合が多いので、裁判所の指示が明確に記録に残るというメリットもあります。
書面の提出についても、現在では民事裁判書類電子提出システム(mints)により、準備書面、書証の写し等の書類をオンラインで提出することが可能となりました。そして、将来的には訴えの提起もインターネットを利用することができるようになります(2024年3月1日時点では施行日は未定です。)。
このように、民事訴訟手続のIT化によって、遠方の裁判所の事件についても近郊の裁判所の事件と同様に訴訟追行することができようになりました。場所による制限なく法律事務所を選べる時代が来たことを実感しております。
弁護士 平田 慎二