弁護士ノート

lawyer notes

各国の知財専門家の呼称Patent Agent、Patent Attorney、Patent Lawyerの違い

2025.01.16 弁護士:小林 幸夫 その他の知的財産関連業務

 今まで弁理士・知財弁護士として業務を行ってきた中で、国際的な活動も若干しております。例えば、昨年APAA(The Asian Patent Attorneys Association アジア弁理士協会)の年次大会に参加した際には、日本の委員会の委員長として発表を行い、日本弁理士会の国際活動の一環として日本の知的財産訴訟の特徴を紹介しました。その際、各国の知財専門家とお会いして、名刺交換すると、以下のような肩書をみることがありました。

“Patent Agent” “Patent Attorney” “Patent Lawyer”

 当方は、この呼称が日本でいう弁理士、弁護士と同じように、弁理士試験、司法試験を合格し、研修を経て登録し、特許・商標出願ができると考えていたのですが、どうも違うようです。当方が調べた結果、概ね以下のような内容と考えられます。

“Patent Agent”
➡ 特許庁の手続き(特許出願に関する手続き)のみを担う、商標出願や訴訟手続きは扱わない、扱えない資格。
“Patent Attorney”
➡ 米国では弁護士の資格を有しつつ、理科系の学位、知識を有することが前提の資格であり、訴訟手続き、特許・商標の出願手続きもカバーしている資格。インドでも同じ意味のようです。
“Patent Lawyer”
➡ これは商標出願手続き、訴訟手続きも可能であるが、特許出願代理はできない資格。インドで使われているようです。

 商標出願については、弁護士・弁理士の資格がなくても出願が可能な国もあります。日本では、司法試験・弁理士試験の各制度があり、弁理士になれば特許だけでなく商標に関連した業務を行うことが当然との認識がありますが、これは世界をみても稀な制度のようです。
 今後皆さんが外国の知財専門者と名刺交換をする際、相手の方の名刺の肩書をよくご覧ください。そして、是非その方に資格獲得の試験制度、業務範囲について聞いてみてください。

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本ブログの記載にあたり、友人からの情報に加え、以下の資料を参考にしました。
世界各国法曹の現状と課題:(大阪大学大学院法学研究科・助教授 福井 康太先生)
各国の弁護士資格の概要(NNAグローバルナビ)
海外法曹事情-イギリスの法曹養成(自由と正義-2011年12月号 相川 裕先生)
韓国の弁理士試験と日本の弁理士試験(知財ぷりずむ2013年12月号 朴沼泳先生)
外国における弁理士制度と企業内弁理士の活躍の実態(パテント2013 Vol.66 No.9 田中祥一先生ほか)
代理人制度(インド編)(知財ぷりずむ2014年8月号 Mr.Kshitij Malhotra)

弁護士 小林幸夫

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