弁護士ノート

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印紙税について③

2017.04.13 弁護士:神田 秀斗 一般企業法務

 以前の印紙税ブログ①、印紙税ブログ②では、課税文書の区分けや、具体的な判断方法についてご説明いたしましたが、今回は、印紙を貼らなかった場合や貼り過ぎてしまった場合についてご説明します。

1 印紙を貼らなかったら?

 (1)契約は有効

 よくご相談を受けるのは、「印紙を貼らなかった場合には、契約は無効になるのですか?」というものです。

 この問題に関しては、民法の原則との関係で考えれば結論が出ます。民法上、契約とは、当事者間の意思表示が合致したときに成立するものとされており、原則としてそれ以外の事由により成立が妨げられることはないと考えられています。そもそも、印紙を貼るか否かは、税法上の問題であって、契約の成否とは直結しません。

 したがって、印紙を貼らなくとも、原則として契約が不成立又は無効となることはありません。

 (2)過怠税が課せられる

 税法上の問題に移ると、もし貼るべき印紙を貼らなかった場合、過怠税というものが課せられます。過怠税の計算方法は以下のとおりです(印紙税法20条1項)。

 「当該納付しなかつた印紙税の額」+「その二倍に相当する金額」

 つまり、納めるべき印紙税額の3倍の印紙税が課せられるのです。例えば、1000円の印紙を貼るべき場合にもかかわらず、当該印紙を貼らなかった場合、1000円+1000円×2=3000円の過怠税が課せられます。

 もっとも、ブログ①や②でご説明したとおり、印紙税がいくらかというものは、我々法律家でも即答できないものがあります。それにも関わらず、貼るべき印紙の額が足りなかったことをもって過怠税が課せられるのはなかなか厳しいものがあります。

 そこで、課税文書の作成者が所轄税務署長に対し、作成した課税文書について印紙税を納付していない旨の申出をした場合で、その申出が印紙税についての調査があったことによりその課税文書について3倍の過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その過怠税は、その納付しなかった印紙税の額とその10%に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の1.1倍)になります(印紙税法20条2項)。

 なお、ここでいう「印紙を貼り忘れる」とは、印紙に消印をしない場合も含むため注意が必要です(印紙税法20条3項、8条2項)。

 (3)故意に貼らなかった場合は?

 本ブログをご覧になっている方の中にはいないと思いますが、課税文書であるにもかかわらず故意に印紙を貼付しなかった場合には、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処せられる可能性があります(印紙税法22条1号)。

2 印紙を貼り過ぎた場合は?

 印紙を貼らなくてもよい契約書に印紙を貼ってしまった場合や印紙を貼り過ぎてしまった場合には、税務署に申告することにより過誤納金として還付を受けることができます。

 また、消印していない場合には、郵便局へ持参することにより、貼付していない印紙と交換してもらえるサービスもあります。

(神田)

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