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1 印紙のご相談
前回のブログで、1号文書及び2号文書についてご説明しました。
今回は、少々厄介な7号文書についてご説明します。
2 7号文書とは
7号文書とは、「継続的取引の基本となる契約書」をいい、印紙税額は1通につき4000円です。
国税庁のウェブページを見ると、「継続的取引の基本となる契約書」とは、「特定の相手方との間において継続的に生じる取引の基本となる契約書のうち次の文書」をいうとされています。
実務では、全ての個別契約に適用される「基本契約」を先に締結し、その後詳細については個別契約で定めるという取引形態も多く見られます。その場合の「基本契約」に相当するものが「継続的取引の基本となる契約書」です。
では、具体的にどのような場合に「継続的取引の基本となる契約書」となるのでしょうか。
まず、国税庁の上記ウェブページには、「ただし、その契約書に記載された契約期間が3ヶ月以内であり、かつ、更新の定めのないものは除かれます。」との記載があります。
したがって、①基本契約といっても契約期間が3か月以内であるものや、②更新の定めがなく期間満了により直ちに終了する契約は、7号文書に該当しないこととなります。
また、印紙税法施行令26条を見ると、以下の規定があります。
(継続的取引の基本となる契約書の範囲)
第二十六条 法別表第一第七号の定義の欄に規定する政令で定める契約書は、次に掲げる契約書とする。
一 特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(法別表第一第十七号の非課税
物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、売買、売買の委託、運送
、運送取扱い又は請負に関する二以上の取引を継続して行うため作成される契約書で
、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、
単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定める
もの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)
二 代理店契約書、業務委託契約書その他名称のいかんを問わず、売買に関する業務、
金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続し
て委託するため作成される契約書で、委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払
方法を定めるもの
三 銀行取引約定書その他名称のいかんを問わず、金融機関から信用の供与を受ける者
と当該金融機関との間において、貸付け(手形割引及び当座貸越しを含む。)、支払
承諾、外国為替その他の取引によつて生ずる当該金融機関に対する一切の債務の履行
について包括的に履行方法その他の基本的事項を定める契約書
四 信用取引口座設定約諾書その他名称のいかんを問わず、金融商品取引法第二条第九
項(定義)に規定する金融商品取引業者又は商品先物取引法(昭和二十五年法律第二
百三十九号)第二条第二十三項(定義)に規定する商品先物取引業者とこれらの顧客
との間において、有価証券又は商品の売買に関する二以上の取引(有価証券の売買に
あつては信用取引又は発行日決済取引に限り、商品の売買にあつては商品市場におけ
る取引(商品清算取引を除く。)に限る。)を継続して委託するため作成される契約
書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち受渡しその他の決済方
法、対価の支払方法又は債務不履行の場合の損害賠償の方法を定めるもの
五 保険特約書その他名称のいかんを問わず、損害保険会社と保険契約者との間におい
て、二以上の保険契約を継続して行うため作成される契約書で、これらの保険契約に
共通して適用される保険要件のうち保険の目的の種類、保険金額又は保険料率を定め
るもの
ここで重要なのは、1号です。1号からは次の要件を読み取ることができます。
① 営業者間の取引であること
② 売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する二以上の取引を継続して
行うため作成される契約書であること
③ 二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単
価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定める
ものであること
以上の全ての要件を充たす場合には、7号文書に該当することとなります。
3 1、2号と7号文書の双方に該当する場合は?
前回のブログでのご説明と以上の7号文書の意義から分かるとおり、1、2号文書と7号文書の双方に該当する文書が存在します。
例えば、契約期間が1年で、更新規定がある運送委託基本契約書のうち、目的物の種類について定めているものは、1号文書にも7号文書にも該当します。
1号文書であれば最も安くて200円、7号文書であれば4000円の印紙となり、かなりの差が生じます。
この点、課税物件表の適用に関する通則3のイには、「第1号又は第2号に掲げる文書で契約金額のないものと第7号に掲げる文書とに該当する文書は、同号(第7号文書)に掲げる文書とする。」旨の規定があります。したがって、契約金額の記載があるものは1号又は2号文書、契約金額の記載がないものは7号文書に該当することとなります。
上記の例でいえば、運送契約であっても、契約書自体から運送料が一義的に算出できないもの(単価は書いてあるけれども、それ以上の記載がない場合、月当たりの運送料は記載してあっても契約期間の記載がないものなど。)は、「契約金額のないもの」として、7号文書に該当することになります。
4 「業務委託契約書」の難しさ
例えば、「業務委託基本契約書」などは最も多くみられる契約書ですが、前回でのご説明どおり、まずは、これが「請負」なのか「委任」なのか判断する必要があります。「請負」に該当すれば、次に2号文書か7号文書か判断することになりますが、「委任」に該当すれば、7号文書に該当するか判断することになります。実は、実務で最もよく用いられる「業務委託契約書」が印紙税法上は厄介だったりします。
5 次回
次回は印紙の貼り間違いがあった場合や、印紙を貼り忘れてしまった場合の処理についてご説明します。
(神田)