弁護士ノート

lawyer notes

印紙税について①

2017.03.17 弁護士:神田 秀斗 一般企業法務

1 印紙のご相談

 弊所では、契約書チェックのご依頼を日常的にいただいております。その際、「この契約書の印紙はいくらですか?」というご相談をあわせていただくことも多いです。

 印紙を貼るべきか、貼るとしていくら貼るべきか、貼るべき契約書に貼らなかった場合にはどうなるのか、企業のご担当者様としては気になる部分かと思いますので、以下ご説明いたします。

2 印紙税とは

 印紙税とは、「文書」に課税される税金のことをいいます。

 そもそもなぜ文書を作成するのに税金を支払わなければならないのでしょうか。それは、当事者間において契約書などの「文書」を作成することにより、口頭で行われる場合と比較したとき、取引関係が明確化し法律関係が安定化するというメリットが得られるからと説明されてます。つまり、当事者関係を安定化・明確化するメリットを契約書等は持っており、印紙税は、当該メリットを享受する必要費と考えられているのです。

3 印紙を貼る文書とは

 印紙を貼るべき「文書」は、印紙税法2条に規定があり、「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書」とされています。

 そこで、「別表第一」を見ると、番号1から20までの文書が規定されています。これらの文書のいずれかに該当すれば、印紙を貼らなければなりません(番号1から20に対応して、1号文書、2号文書などと呼ばれます)。

 そして、番号1から20のいずれの文書に該当するかによって、納めるべき印紙税額が異なります。したがって、まずは、1号から20号のいずれ の文書に該当するのか(あるいはしないのか)を判断する必要があります。

 以下では、よくご相談を受ける、 1号文書、2号文書、7号文書についてご説明いたします。なお、この点について、国税庁のHPで丁寧に解説されていますので、一読されることをおすすめいたします。

4 1号文書とは

 1号文書とは、

 ① 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶、航空機及び営業の譲渡に関する契約書

 ② 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書

 ③ 消費貸借に関する契約書

 ④ 運送に関する契約書

 をいうとされています(印紙税法別表1の1)。

 ①は、不動産売買契約書、土地建物売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書などです。したがって、動産売買契約書については、7号文書に該当する場合を除き、印紙は不要です。

 ②は、土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書などです。

 ③は、金銭借用証書、金銭消費貸借契約書などです。

 ④は、運送契約書、貨物運送引受書、用船契約書などです。

 以上の1号文書についてはいずれに該当するかは比較的明確ですね。

5 2号文書とは

 (1) 請負とは

 2号文書とは、請負に関する契約書をいいます。

「請負」とは、民法上、「仕事の完成に対し報酬を支払う契約」をいいます。

 したがって、請負とは「仕事の完成」を目指すものです。つまり、仕事それ自体とは別に仕事の完成を考え、それと報酬との交換を考えるのが、請負ということになります。

 典型的な例でいえば、ビルの建築を依頼する場合です。これは、ビルの建築作業をするという「仕事」をすればよいというわけではなく、ビルの「完成」を目指さなければならないという意味で典型的な請負契約です。

 他方で、医者による診療行為は請負ではありません。それは、医者の診察が患者の病気を完治させるという「仕事の完成」を目指していないからです。

 (2) 業務委託契約書との相違

 ところで、実務で用いられるよく契約書に「業務委託契約書」というものがあります。実務担当者の方は、「業務委託契約書」≠「請負に関する契約書」として、印紙が不要と誤解されているがいらっしゃいます。

 しかしながら、印紙を貼付する必要があるか否かは、契約書のタイトルではなく、内容で判断されます。したがって、業務委託契約が「請負に関する契約書」に該当するか否かは、しっかりその内容を検討する必要があります。

 ここで、上記の請負の意義からすれば、委託する「業務」が仕事をすることのみならず、仕事の「完成」を目指すものであれば、印紙を貼る必要があります。

 この点の判断は微妙なことが多いので、事前に専門家に相談されることをおすすめします。

 なお、別表2には、2号文書の例として、「工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など」が挙げられています。

6 次回

 次回は、7号文書の意義や7号文書と1号・2号文書の相違について説明いたします。

(神田)

BACK