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1 リンクは著作権侵害?:EU司法裁判所の判断についてのニュース
先日、知財関係のニュースとして、「EU司法裁判所、無断リンクは著作権侵害!」といった内容の見出しが躍りました。
中山信弘先生の『著作権法』が「リンク元では複製が行われているわけではないので、基本的には複製権侵害の問題は生じない。」とされているとおり、我々としては、「リンクを張るだけなら大丈夫。」というアドバイスをすることもあるので、見出しを見た瞬間はヒヤリとしました。
2 EU司法裁判所での判断
いくら日本の裁判所の判断ではないとはいえ、当然気になります。
「著作権者に無断で公開された作品にリンクを張る行為は、原則として、公衆送信権侵害に該当しないが、例外的に、
① リンクを張る者が金銭的利益を得ることを目的とし、
② その者に違法で公開されたことの認識があった場合
には、公衆送信権侵害に該当する。」
というもののようです。
また、上記①のような場合には、リンクを張る者において、適法に公開された作品か否か調査する義務を負うべきであるとされているようであり、この点も注目です。
3 見出し程のインパクトは…
見出しだけ見たときはかなりのインパクトを受けましたが、①と②の要件を両方満たすのはかなり悪質な場合ですから、今回のEU司法裁判所の判断は、普段に活動をなさっている企業様のご相談には影響しなそうです。
4 日本ではどう判断されそうか?
今後同様の案件について、日本の裁判所がEU司法裁判所のように著作権侵害という法的な構成を採用するかは分かりませんが、著作権侵害としなくても、著作権侵害行為の幇助として、民法719条2項を適用することはありそうです。
この点について、大阪地裁平成25年6月20日(平成23年(ワ)第15245号)では、動画サイト「ニコニコ動画」に違法にアップロードされた動画の引用タグ又はURLをリンクとして張った行為について、著作権侵害の幇助による不法行為が成立するか否かについて、以下のとおり判示しています。
「しかし、『ニコニコ動画』にアップロードされていた本件動画は、著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが、その内容や体裁上明らかではない著作物であり、少なくとも、このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。そして、被告は、前記判断の基礎となる事実記載のとおり、本件ウェブサイト上で本件動画を視聴可能としたことにつき、原告から抗議を受けた時点、すなわち、『ニコニコ動画』への本件動画のアップロードが著作権者である原告の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちに本件動画へのリンクを削除している。このような事情に照らせば、被告が本件ウェブサイト上で本件動画へリンクを貼ったことは、原告の著作権を侵害するものとはいえないし、第三者による著作権侵害につき、これを違法に幇助したものでもなく、故意又は過失があったともいえないから、不法行為は成立しない。」
判決は、不法行為が成立しない理由について、
① ニコニコ動画にアップロードされた動画について、著作権者の同意を得ているか否か、その体裁からは明らかでないこと、
② 動画が著作権者の許諾なしにアップロードされていたことを認識した時点で、直ちにリンクを削除していること
という2つの理由を付しています。
EU司法裁判所の2つの要件を裏返したような判断ですね。逆にいえば、
① 違法アップロードされた動画であることが、動画の体裁から直ちに認識できる場合や、
② 違法アップロードされた動画であることを認識した後でも、リンクを削除しなかった場合には、
不法行為による損害賠償責任を負う可能性があるということとなります。
(河部、神田)